ASUS IoTの倉庫制御システムで驚異的な倉庫物流の正確性を実現
新北市にある先進的な工場では、複数の自律型モバイルロボット(AMR)が生産ラインと倉庫の間を往復しています。あるAMRは倉庫から資材を搬出し、また別のAMRは昇降機で指定された階に移動して荷役作業を続けます。生産ラインから完成品を出荷エリアまで運搬するAMRもあります。狭い通路を通り、前方に障害物があるときはシステムに誘導されて別の経路を選択します。通路の幅が十分であれば、自動的に障害物を回避して先に進みます。工場内の倉庫担当者は、以前のように何度も資材を運搬する必要がなくなりました。ディスプレイ画面の監視システムで資材の場所と状況をリアルタイムで監視できるためです。これにより、品質制御に集中し、生産プロセスを最適化することができました。
これは産業用組込みシステムの世界的なメーカー兼ソリューションプロバイダであるポートウェル本社での日常的な光景で、ASUS IOTのAMRによる倉庫制御システムを導入した成果です。ポートウェルの製造管理部門マネージャーであるHuang KuoJen氏は、次のように述べています。「2023年12月にこのシステムを導入して以来、倉庫物流の正確性は99%以上を達成し、マテリアルハンドリング要員を3人削減することができました。」この人員は、より有意義な管理やエンジニアリングなど業務に異動となり、労使双方が利益を得るというビジョンが創り出されました。
AMRを導入した倉庫と生産ラインで資材管理が改善
ポートウェルの倉庫担当者は、以前は午前と午後の計2回、生産ラインへの材料準備と輸送作業を行う必要がありました。この過程には、材料を手作業で計算し、パレットに運搬し、油圧トラックによって生産ラインへ配送することが含まれていました。また、生産ラインで完成した完成品も、出荷や保管のために生産現場から倉庫へ手作業で運搬する必要がありました。この作業には最大で10人の人員が必要とされていました。作業場所も、倉庫と生産エリアと3フロアに分散していました。
この数年、KuoJen氏は、製造環境が急速に変化する中で、従来の資材管理と輸送モデルはプロセスの柔軟性欠如や労働力不足などの課題に直面していると指摘してきました。これらの課題を克服するために、ポートウェルはASUS IoTと提携し、ASUS IoTの倉庫制御システムの導入を柱とする5G AloTスマートファクトリーの構築に取り組んでいます。この事業は現在進行中で、ポートウェルは同社の製造実行システム(MES)の各所を接続する作業を進めています。倉庫と生産ラインを緊密に接続することで、工場の業務効率を大幅に改善することを目指しています。
複雑な環境の製造現場ではさまざまなオペレーティングシステムが連動しており、新しいシステムの導入には、環境やシステムレベルの問題を解決するだけでなく、オペレーターの意識を変え、新しい技術を習得するよう導くことも必要です。
ポートウェルのKuoJen氏は、導入に際して直面した問題は、事前に想定できなかったことばかりだったと言います。例えば、AMRがマテリアルハンドリング作業を行うための昇降機を利用できるようにするには、既存の昇降機システムをどのように変更するか、AMRが狭い通路や滑りやすい通路をどのように移動するか、手作業よりも効率が低い初期段階でシステムを使用する従業員をどう説得するか、などです。これらのタスクは、新システムを製造現場にスムーズに統合するために極めて重要な課題でした。KuoJen氏は次のように述べています。「これらの問題を解決するには、システムメーカーと導入企業の緊密なコミュニケーションが不可欠です。予定通りの導入メリットを実現できるよう、私たちは協力して問題を一つひとつ克服しました。
倉庫制御システムの導入後、最も直接的で明白な効果は、前述の通り、倉庫物流の正確性が99%を超え、マテリアルハンドリング要員を3人削減できたことです。さらに、このような数値に現れないところでも間接的な効果がありました。」
例えば、材料準備と輸送業務では、倉庫からの搬出、AMRによる輸送、荷下ろしに至るまで、すべての材料の数量、輸送ルート、時間データがシステムに自動的に記録されるため、管理担当者は材料の所在を容易かつ正確に把握できるようになりました。これにより、材料管理の効率が向上し、配置ミスも大幅に減ったため、生産ラインの稼働が円滑になりました。
ASUS IoTによるカスタム化が、現場スタッフが持つ反感を最小限に抑える
ASUSロボットメカトロニクス制御研究開発部門の機械研究ディレクターであるHsu ChiChaoは、工場の環境や作業プロセスはそれぞれ異なるため、新しいシステムはソフトウェアとハードウェアの両面でカスタマイズされた設計でなければならないと述べています。ポートウェル向けのASUS IoTの倉庫制御システムは、まさにそのような特徴を備えています。このシステムは、倉庫管理とAMRという2つの主要プラットフォームを統合しています。倉庫管理は、詳細な材料情報をリアルタイムで記録し更新することが重要です。これらの情報はAMRに伝達され、原材料、半製品、完成品などの入出庫処理を行います。
ASUSチームは、ポートウェルの生産ラインと倉庫のニーズを把握するため、工場の敷地と作業手順を現地で調査しました。ChiChaoは、「新しいシステムは、現場の従業員の否定的な考え方を軽減するため、可能な限り従来のプロセスと一致させ、作業プロセスを一層便利にする必要がありました」と強調します。そのため、ASUSは、ソフトウェア面においてはユーザーニーズに焦点を当て、直感的なグラフィカルユーザーインターフェイスなどのカスタマイズサービスを提供しています。ハードウェアの面では、AMRにさらにインテリジェントな機能を装備させました。とくに、ネットワーク通信の面では、ASUS IoTがポートウェル向けにカスタムメイドの5Gプライベートネットワークを構築し、5Gの低遅延特性により、AMRが材料の搬送作業を正確かつインテリジェントに実行できるようにしました。
緊密な協力と継続的なフィードバックが倉庫制御の成功をもたらす
倉庫物流の正確性が99%を超え、人員削減も実現され、さまざまな派生効果をもたらしたポートウェルの倉庫制御システムは、製造業におけるデジタルトランスフォーメーションの代表例となっています。KuoJen氏とChiChaoは、導入に関心のある製造企業の皆様の参考となるように、次のように助言しました。
KuoJen氏は、まず、導入の観点から自身の経験を共有しました。KuoJen氏は、設計の初期段階における企業とシステム構築者とのコミュニケーションが極めて重要であると考えています。KuoJen氏は、「工場はそれぞれ異なるため、ASUS IoTとポートウェルはそれぞれの現場の環境と仕様を明確に定義する必要がありました」と強調しました。初期段階でコミュニケーションを取ることにより、両社はそれぞれのシナリオの特徴と需要側の目標利益を理解でき、後々の修正コストを削減できます。次に、システムのインターフェイス設計では、ユーザビリティを考慮する必要があります。「ポートウェルを例に取ると、当社のエンドユーザーはオペレーターですから、インターフェイスはシステムと機器を明確かつ簡単に使用できるものでなければなりません。」
次に、ChiChaoが構築側からの意見を述べました。システムを設計する前に、構築者側は顧客の資材取り扱いプロセスを十分に理解する必要があります。「ASUSのアプローチは、現場に赴き、顧客の既存の作業方法を深く理解した上で、その情報を基にAMRの運用を調整することです。」と述べました。マテリアルハンドリングのプロセスを観察する一方で、現場の作業員と何度も綿密な話し合いを行い、実際のユーザーの作業プロセスとシステムの機能要件を理解し、それをシステム開発に組込む必要があります。ChiChaoは最後に、このシステムのメリットが予定通りに高品質で実現されることを保証するため、システム稼働後も、継続的に現場を訪問して使用状況を検査し、現場作業員からのフィードバックに基づいて調整を行う必要があると指摘しました。
ASUS IoTの倉庫制御システムは、ポートウェルの当初の目標であった業務効率の向上とコスト削減を実現しました。今後、ポートウェルとASUS IoTは、システム性能を段階的に強化していく予定です。この戦略は生産能力を最適化するだけでなく、顧客やその他の業界関係者、学術関係者の訪問を受けた時にデジタルトランスフォーメーションへの決意と成果を実証する役割も果たします。ASUS IoTチームにとって、この成功事例はスマートマニュファクチャリング分野におけるブランドイメージを高めるもので、高性能で最適化された5G AloTスマートファクトリーアーキテクチャを提供するため、顧客ニーズの理解を広める一助となります。